《MUMEI》
憎悪の連鎖
仙春美は土下座して平謝りだ。虎に睨まれたら生きた心地がしない。
「母上様。どうか命だけは取らないでください!」
しかし母は冷笑を向ける。
「あなたは相手が降参して哀願しても、意地悪するでしょう?」
「まさかまさか。哀願したら許しますよ」
「ずっと見てましたよ。娘がやめてと言ってもやめなかったでしょ」
「や、それは…」春美は冷や汗100リットルだ。
震える仙春美。演技ではなさそうだ。母は余裕の笑みで助け舟を出した。
「まあ今回は私の娘にも落ち度があったみたいね」
「お嬢様に落ち度などありません。全部私が悪いんです」
「あなたもまだ36で若いのに、あのセリフはないわね」
「わかっていただけますかお母様。正直傷つきました」訴える目。
「だからといって嫁入り前の娘に、バター犬はひどくない?」
春美は慌てふためいた。
「あれはやり過ぎたと反省しております」
「でも下着を最後まで脱がさなかったのは偉いは」
「もちろんですとも。菌が感染したら大変ですから」
やや自慢げな顔の春美を、母は睨んだ。
「ところで、全裸にして逆さ吊りにして、そのあと娘たちをどうするつもりだったの?」
仙春美は中腰になると、引きつった笑顔で両手を出した。
「あんなもんは脅し文句ですよ。本当にやるわけないじゃないですか。エロアニメじゃあるまいし」
「そうかしら?」
「女の子を裸になんかしません」
再び頭を床につける春美。キリがない。母は笑みを浮かべながらも、やや厳しい口調で言った。
「ここで私があなたを傷つければ、あなたはまた娘たちに復讐するでしょう」
「絶対にしません!」
「話を聞きなさい」
「はい」
「ここで憎悪の連鎖を断ち切るわ。二度とあの三人に変なことをしないと誓う?」
仙春美はパッと顔が明るくなった。
「誓います誓います!」
「じゃあ、悪さはしないことね」
虎がゆっくり母のもとへ歩く。許されたか。仙春美はひたすら頭を下げた。
「ありがたき幸せ」
「次はありませんよ」
「ははあ!」
「女の子が下着姿で手足縛られて、8人の男に囲まれたら、逆らえないわ。そういうやり方は卑怯よ」
「深く反省しておりまするう」
母はもの足りないと思ったが、ひたすら平謝りでは、手が出しにくい。虎と一緒にその場を去った。

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