《MUMEI》
出来損ない
「なぁ、おい!まだコレ取っちゃいけねぇのかよ?」

檻に入れられたその男は、視界が塞がれている為、手探りで自分の居場所を把握しようとしていた。

「取りたければ取りなさい。」

「んだよそれ…!」

有馬の冷たい言い方にその男はぶつくさ言いながらも、目を被っていた布を解いた。


「ど…どこだよ、ここ!?」

まさか自分が檻の中に居るとは思ってもいなかっただろう。

男は急にうろたえ出した。

「外に出してくれるんじゃなかったのかっ!?お前、開放すると言ったじゃないか!!」

男は今にも修二に噛み付きそうな形相で見る。

「あぁ、確かに。だから開放したじゃないか、あの部屋から。」

修二は口元に嫌な笑みを浮かべながら、男を馬鹿にしたくちょうで言い放つ。

「ただ、お前なんか勘違いしてない?俺は一言も外に出すなんて言ってないぜ?」


すると男は情けない声を出してそのばに崩れ込んだ。

「出来損ない君、そんな悠長にしてる暇なんかないよ?後ろ見てみな?」


そんな男を面白気に見ている修二が更に声をかける。
男は言われて素早く後ろを振り返った。


「ひ…っ!こ、コイツは…」

すると男は急に恐怖におののいた表情をした。




この人、リョウの事知ってるんだ!!
それにこの怖がり様…
リョウの事情も知ってる。




一体何故なのか…


加奈子の疑問は膨らむばかりだった。

前へ |次へ

作品目次へ
ケータイ小説検索へ
新規作家登録へ
便利サイト検索へ

携帯小説の
(C)無銘文庫