《MUMEI》 . 呆気に取られていると、窓ガラスに張り付いていた女の子たちが、興奮したように言う。 「ねェ!アレ見てよッ!!」 「マジ?本物??」 「ゲリラライブとか!?」 「うっそー!!早く外行こ!!」 バタバタと慌ただしく店内から走り去る彼女たちの背中を見つめ、わたしは眉をひそめた。なんのことやらさっぱりだ。 チラリと仲元くんを伺うと、彼も事態が把握出来ていないようで、肩をすくめてみせた。 わたしはなんとなく気になったので、窓ガラスの端っこから、外を盗み見る。 ちょうど、わたしたちがいる建物の真正面に、即席のステージのようなものが建てられていた。 骨組みが剥き出しになっている、その素っ気ないステージの周りを、たくさんのひとたちが幾重にも取り囲んでいた。 . 前へ |次へ |
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