《MUMEI》 . わたしは窓ガラスに、そっと手を触れる。ひんやりと、無機質で冷たい感触が、指先からじわじわ伝わってきた。 その冷たさは、わたしの身体中を浸食し、 ついには心の奥まで届いたような気がした。 『もう、関わらないで欲しいんだ』 不意に、伊達さんのあの言葉が、蘇ってくる。 なぜかギリギリと、胸が軋んだ。 ガラス越しに見る、優しくほほ笑む廉の姿は、 今、わたしがいるこのお店と同じ次元に存在しているようには、 到底、考えられないほど、キラキラと輝いていた。 ガラスに触れていた手を、グッと握りしめる。 . 前へ |次へ |
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