《MUMEI》 標的駐車場から出て、織田はどこかへ向けて車を走らせる。 後ろではさっきまで荒い呼吸音が聞こえていたが、今ではそれもなくなっていた。 振り向くまでもなく、男は死んだのだろう。 「どうするつもりだ?」 ユウゴの質問に織田は前を見たまま答えた。 「まずは公民館の場所を探す」 「どうやって?」 この車にナビでもついていればいいのだが、あいにく装備されていないのだ。 織田はユウゴの質問には答えず、ただ車を走らせる。 すると後ろでケンイチが口を開いた。 「なあ、それよりこいつどうにかしてくれない?邪魔なんだけど」 振り向くとケンイチが息絶えた男の体を足で押しながら自分から遠ざけていた。 「死体の処理とか、面倒だ……。しばらくそのままでいろよ」 ユウゴが言うとケンイチは不満そうな表情をして男の体を蹴った。 ユウゴたちがそうしているうち、車が路肩に停車した。 そして織田は車を降り、歩道へと向かう。 どこへ行くのかとユウゴは彼が向かう先へ視線を動かした。 そこには今ではあまり見ることのない電話ボックスがあった。 どうやらこれを探して走り回っていたようだ。 織田はその中に入り、備えつけられている電話帳を手にとる。 そこでユウゴは納得した。 たしかに公民館であれば電話帳に番号が載っているだろう。 住所がわからないなら電話して聞けばいいのだ。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |