《MUMEI》
油断、危険。
「うわ!!」
マミーが力いっぱい殴りかかって来たのを何とか盾で弾く。
「この!!」
慌てて斬り返すが・・
ゴ・・
鈍い音がした。
良く見ると剣はマミーの右腕に持っていた盾に当たり、がっちりと固定されている。
ビュン!
再び振るわれるマミーの右腕。
「くそ!!」
手から剣を離し回避をしようとするが・・遅すぎた。
ゴス・・
「ぐぇ・・」
腹部にマミーの攻撃が直撃、鎧の上からとはいえ、衝撃に吐きそうになる。
フラフラよろめきながらも、距離をとった狩月はリングオブウェポンを剣へと変え、右手に構える。
「すぅ〜〜・・はぁ〜〜」
しっかりとマミーを視界に納め、大きく深呼吸する。
(落ち着け、落ち着け・・・)
呼吸を整え、ジリジリと間合いを詰めていく。
「がぁあああ!!」
魔力を収束させることで簡易型のホークアイを起動させた視界の中、マミーが大きく左腕を振りかぶった。
「今だ!!」
踏み込み、カウンター気味に斬る。
左腕が宙を飛び、体勢を大きく崩すマミー。
「はあああああああ!!」
胴体に深々と剣を突き刺し、すぐさま剣を抜き、大きく距離をとる。
「はぁ、はぁ。」
油断無く剣を構えながらマミーが倒れるのを見届ける。
ドサリ・・
倒れたマミーが動かないのを確認し、戦利品になりそうな物を探す。
マミーの持っていた盾は恐らく、冒険者から奪ったものだろう。あまり高価な品ではない・・それどころかボロボロで売り物にはならないだろう。
「ふぅ・・売り物になりそうなのは・・無いか。」
少し残念そうに呟き、盾に食い込んだ剣を抜き、鞘に収める。
この世界では、頭部、つまり脳さえ重大な損傷が無い限り蘇生することが可能である。もちろん蘇生させるには大金が必要な上、成功率も100%ではなく、失敗する事もある。その遺体を専門の寺院に運ぶ手間もある。PTを組むことで、自分の遺体を運んでもらうのである。もちろん、仲間と一緒に狩りをしたほうが楽しい。と言う理由もある。
「休憩所までもう少しか。」
スタスタと奥へと進んでいく。
「一人だと・・心細いかも。」
ちょっと呟き、休憩所でどこかのPTに入れてもらえば良いかと納得する。
今までも何人かとすれ違っていたことを考えれば結構な人数が休憩所の側にはいるだろうと思った。
と、
ピコン!
電子音が聞こえ、ウィンドウが展開される。
「なんだ?」
本文に眼を通して唖然とした。
「!緊急、第7階層よりモンスターに追われて逃げてきた奴が居る。そいつを追ってかなりの数のモンスターが第1階層にまで侵入、大急ぎで逃げろ。」
シャウト、そう呼ばれてる伝達方法。側にいる不特定多数のヒトに発信し、周囲のヒトにアピールする方法。その中でも緊急用に使われる強制展開は街などで悪用すると、投獄されることもある。
「第7階層・・」
しばらく固まっていたが、即座に出口へ向かい走る。
「くっそ!!」
間の悪いことに出現したマミーを体当たりで押しのけ、出口へと走る。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫