《MUMEI》

.

彼は、わたしの目を見つめ、にこやかにほほ笑む。


「すっげーよなぁ。トップアイドルがクラスメートなんて、ちょー自慢!」


そこで一息置いて、彼はまた窓ガラスからアイドルたちを見つめた。

そのまま、でも…と続ける。


「やっぱり、『世界が違う』感じ、するよね」



その台詞に、

このまえ、伊達さんが言った、『特別な立場』という言葉を思い出した。


廉は、今をときめく、トップアイドル。

わたしは、しがない一般の女子高生。


その関係性は、

今後、どんなことがあっても、

覆ることは、ないのだ。


わたしは仲元くんの横顔を見つめて、

小刻みに震える唇を動かした。



「そうだね…」



わたしの小さな呟きは、

賑やかに始まった、『LE FOU』の楽曲のドラムの音に掻き消された。





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