《MUMEI》
手土産
それは、クーがオゾンの部屋を出て、帰り支度を始めた時だった。


『ちょっといいかい?』

『はい?』


誰だ?


クーに話しかけてきたのは、白衣を着た細身の、眼鏡をかけた男性だった。


『私の名前はグリーン。気軽にグリーン博士と呼んでくれたまえ』


博士のどこが気軽になんだろう…


対応に困るクーをよそに、グリーン博士は一方的に喋り続けた。


それはほとんどがただの自慢話で、クーは次第にうんざりしてきた。


『あの…』


そろそろ帰りたいんですけど


『あぁ、失礼。では、お近づきの印に、これを』


そう言ってグリーン博士がクーに渡したのは、ラベルの無いワインボトル


『あの、僕未成年なので…』

『お酒じゃないから大丈夫』


何だ、紛らわしいな


『これは、私が調合した植物専用の栄養剤だよ。きっと、とても喜ぶから、試してみたまえ』

『はぁ』


うち、観葉植物最低限しか無いんだけどな


戸惑いながらも、クーはグリーン博士に強引に渡されたワインボトルを、バックにしまい、持ち帰ったのだった。

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