《MUMEI》
エヴァードの過去*SIDE*龍翼-5th
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〈…あの空間は〉
シャロンは尾を揺らした
〈そこにいる者が何をもってして、
より強い力を発揮できるのかを見極め、
自覚するための場所でもある〉
「…見極め」
ジンが呟いた
〈よってあの空間では、人間が持つ…〉
シャロンの瞳が
再び、俺を捕らえる
〈勇気、知欲、怯え、……恐怖〉
「………」
〈その他全ての感情が、表に出やすくなる。
…言ってみれば、副作用だ〉
シャロンは羽ばたき、飛び上がって再び窓辺に留まった
〈あの空間で感じた感情は、覚えておきなさい〉
レスカが寝返りをうち、
シャロンはチラリとそれを見た
〈…きっと、役立つ日が来る〉
「…あぁ。」
ジンは二度ほど頷いた
〈…よく寝ているだろう?〉
シャロンはレスカを見ている
心なしか声が笑っていた
〈催眠魔法をかけたんだ。今までの話は彼女には教えないでもらいたい〉
「なんで?」
俺は自分の心に素直になって、訊いた
〈彼女の過去に関係している、とだけ言っておこう〉
俺が腑に落ちない様子なのを見て
〈そのうちに、わかるさ〉
シャロンの声はしっかり笑っていて
〈さて、私は休むよ〉
そう言って羽に顔を埋めた
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