《MUMEI》 . 彼はどこか難しい顔をして、わたしを見つめている。 「…なんか用?」 素っ気なく尋ねると、 由紀は口を開いた。 「昨日、バスケ部の仲元とデートしてたって、マジ?」 不躾に聞かれて、わたしは眉をひそめる。なぜ、そのことを知っているのだろう。 不思議に思っていると、由紀はつづけた。 「他のクラスのヤツから、聞いたんだよ。お前らが仲良く街歩いてるの見たって」 昨日は日曜だったし、 街にはたくさんのひとがいた。 その中に、同じ学校のひとがいたとしたら、 わたしと仲元くんを目撃されることも、もちろんあるだろう。 わたしは納得し、ゆるりと瞬く。 「デート、したよ」 それがなに?と挑戦的に言い返す。べつに悪いことはしていない。 . 前へ |次へ |
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