《MUMEI》 . それから、手にしていた紙袋をわたしに差し出した。昨日、彼と一緒に行った雑貨屋さんの紙袋だった。 「昨日、忘れたでしょ?」 プレゼントしたカメラだよ、と言う。 そこでようやく、わたしは紙袋をほっぽり出して、帰ってしまったことを思い出す。 ………あのとき、 武田先輩がいて、 それどころじゃなかったからな。 わたしは紙袋を受け取りながら、ありがとう、と言うと、仲元くんは、どういたしまして、と答えた。 「今日、一緒に帰らない?」 爽やかに誘ってきた彼に、わたしは首を傾げる。 「部活は?休みなの?」 「今日はミーティングだけ。すぐ終わるから、待っててくれる?」 ちょっと迷ったが、今日はとくに用事もない。 . 前へ |次へ |
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