《MUMEI》

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わたしはおもむろに、その紙袋を手にとり、自分の膝の上に置いた。


中をあさって、トイカメラを取り出す。


白いプラスチック製のそれは、とても無機質で軽く、


それが少し、虚しかった。


わたしはベンチにもたれ掛かり、空を見上げる。

どこまでも広がる青空は、澄み切っていて、

今のわたしの、このどんよりとした気持ちとは対照的だった。


「…きれい」


空を見ながら、ぽつんと、呟き、

いいことを思い付いた。


わたしは持っていたトイカメラを、上に向かって構えて、

ファインダーを通して、その空を眺める。


−−−セルリアンブルーの、淡いグラデーション。それを背景にしてたなびく、白く薄い雲。


幻想的な世界が、そこに広がっていた。


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