《MUMEI》 . だれかに見せたい。 この空の美しさを、ともに分かち合えるような、だれかに。 でも、 だれもいない。 由紀は、わたしに愛想を尽かせてしまったし、晃も彼に従って、わたしから離れていった。 たったふたりだけの、 わたしの友達。 しばらくカメラを抱えたままでいると、 目頭が、じんわりと熱を持ってきて、 ファインダー越しの空が、 みにくく滲んだ。 ………そっか。 わたし、 ひとりぼっち、なんだ。 そのことに、ようやく、気がづいた。 寂しさに、肩が震える。 虚しくなって、わたしはカメラを膝の上に戻した。 ちょっとでも気をゆるせば、涙がこぼれおちそうで、 それをこらえるのに、必死だった。 空を仰ぎながら、自分の腕で、目元を覆う。 . 前へ |次へ |
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