《MUMEI》 . 素っ気ないわたしの態度を気にする様子もなく、廉は顔を離して、抱えていたテキスト類を掲げて見せた。 「これから特別補習。しばらく休んでたから」 言いながら彼は、わたしが座っているベンチにゆっくり腰をおろす。それからわたしの顔を見て、…てかさー、といきなり話を変えた。 「なんで、このまえ勝手に帰ったんだよ?せっかく連れて行ってやったのに」 廉の言う『このまえ』というのは、きっと、テレビ局での撮影のことだろう。 −−−あのとき、 伊達さんに、『もう廉には関わるな』と言われて、 わたしはどうすることも出来ず、 廉になにも言わずに、テレビ局から立ち去ったのだった。 . 前へ |次へ |
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