《MUMEI》 . わたしは廉を見つめ返して、瞬いた。 「…用事を思い出したの」 テキトーな嘘をつくと、廉は、は?と、眉をひそめた。 「そんなこと言ってなかったじゃん」 「忘れてたのよ」 「その程度の用事なんか、後回しにしろよ」 意味のない言い争いがつづく。 わたしは疲労感を覚えて、彼から目を逸らして俯き、深いため息をついた。 「べつにいいじゃん、わたしのことなんて。ほっとけばいいでしょ」 投げやりに言ったわたしに、廉は、やだね!と、子供が意地を張るように言い返した。 「お前が俺のこと、『カッコイイ』って認めるまで、絶対あきらめない」 その言葉を聞いて、 思い出したのは、 仕事をしているときの廉の姿。 . 前へ |次へ |
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