《MUMEI》 . 少し、間を置いて、 わたしは、俯いたまま、 小さな声で、答えた。 「…カッコ良かったよ」 不思議な沈黙が、わたしたちを覆う。 廉は、なにも言わなかった。 わたしはつづける。 「すごい人気なんだね。ひと、たくさんいて、アンタのこと、あんまり見えなかったけど…」 そこまで言って、目を伏せる。 込み上げてくる複雑な感情を必死に抑え込み、 わたしは、ゆっくり、顔をあげて、 隣にいる廉を見た。 廉は、ぽかんとした間抜けな表情を浮かべている。わたしの言葉が、信じられないとでも言いたげだった。 その、彼の目を見つめ、 震える唇を動かし、 「……これで満足?」 はっきりと、言い捨てた。 . 前へ |次へ |
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