《MUMEI》

「お帰りなさい。昨日開けたワイン飲んじゃう?」

帰ってくると最愛の人がお出迎えなんて嬉しいな……。


「飲むー。」

俺がグラスを準備し始めると二郎は冷蔵庫からつまみを出してくれる。


「律斗は?」


「部屋で勉強してる、好きみたいだよ。」

テレビやゲームが面白いと今の子は言うのに、絵本を読んでお勉強とは律人って乙矢タイプか?


「そうだ、律斗の学校どうする?」


「それね、七生の小学校にしようと手続きしてきた。」

ワイン噴きそうになった。


「なんで言わないのかなああああ?」

最近、じろーのワンマンが目立つ。


「え、七生を驚かそうかと思って、いけなかった?」

可愛く言うな、勝てないから……。


「驚かすポイントが間違ってる……あのね、まずは相談しよ?一緒に暮らしてるんだからね。二人で決めてこうって約束したじゃん、俺の楽しみなんだからさ、あんまりなんでも一人で決めたらペナルティとしてなんか着てもらうからな。」


「着るってなにを……」

なにって、なんでも。


「あ、メイドさん?」

ふふ、メイドさんには素敵な思い出がありますからね。
今、着たらさぞセクシィだろうな。


「メイド無理っ、あれは気の迷いだったから!」

否定するんだ、俺達の美しい思い出なのに。
まあ、今度こっそり鮎子さんにメイド服用意してもらおう。


「絶対に似合うのに。」


「似合わない!」


「似合うよ、本当に。」

耳元で優しく教える。


「っ……!」

恥ずかしがって言葉も出て来ないようだ。


「じろーってなんでも似合うよ?違うな……じろーだからなんでも似合うんだな。じろーの滑らかな肌がなんでも綺麗に見せちゃうんだよな。」

頬を触って確認する。


「そんなこっ恥ずかしい台詞をどこで覚えてくるのか。」

照れ隠しの毒を吐きつつも赤らめた肌を許してしまうとこが愛おしい。


「俺の知識の泉から溢れ出してくるのだよ。」

二郎には惚れ込んで貰いたいから。

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