《MUMEI》

「終わりか。」



ビデオが止まる。



「…」



こうして自分たちの試合を見るのは初めてのことではない。


が、


ビデオを見て自分たちの腑甲斐なさを嘆いたのは久々であった。



「イージーなミス多いな…」



「普段ならあり得ね〜よ。」



「これは…凹むわ…」



「明日もこの調子だとマジでやられんぞ…」



「…」



一瞬の沈黙が流れる。



ポキッ…



「…椎名次。」



勉強机の椅子に後ろ向き座った体勢で、


ポッキーを噛りながら村木が言った。



「次?
…つ〜か何勝手にポッキー食ってんすか。」



ポキッ…



「明日の対戦相手のビデオ。」



「えっ…あぁ…」



今日に限っては撮影していたのは自分たちの試合だけではない。



これから先自分たちが当たるかもしれない対戦相手の試合は全て撮影していた。


これもクロが対策を練る為の物であったが、


椎名は強引にこれを借りていた。


クロはこれを渋々納得し、


絶対に勝つことを椎名に約束させた。



「えと…
どこの試合見ますか?」



「市立と秀皇で十分だろ。」



「んじゃまず市立工業から見ましょうか。」



ポキッ…



「村木俺にもちょうだい。」



ポキッ…



「…」



「無視すんなッ!!」



「つ〜かそれ俺のですからッ!!」

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