《MUMEI》 . ………そう。 とても簡単なことだったのに、 どうしてこんなにも、頑なになっていたのだろう。 続けざまに言われた言葉に、廉は黙り込んで、目を大きく開いた。 その瞳を見つめて、わたしは、ゆるりと瞬き、 これでいいでしょ?と、唄うように呟く。 「気が済んだら、金輪際、わたしに関わらないで」 さらに、突き放すように言う。 廉はなにも言わなかった。ただ呆然とわたしを見つめていた。 その顔が、どこか、悲しげに見えて、 わたしの胸が、軋むように痛んだ。 わたしは廉から目を逸らすと、 「早く補習、行ったら?先生、待ってんじゃないの?」 あえて素っ気なく、早口にまくし立てた。 これ以上、廉と一緒にいたくない。 廉の、悲しそうな表情が、 わたしの、この胸の痛みが、 なによりも耐え難かったから。 . 前へ |次へ |
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