《MUMEI》
待ちびと
.

廉は苛立ちを抑えきれないように、また怒鳴った。


「本気で言ってんなら、俺の顔見てもう一度言ってみろよ!?」


わたしは、なにも言えなかった。ただ、廉の顔を見つめ返すことが精一杯で、動けない。

黙り込むわたしに、廉はつづけた。


「なんて言われた!?伊達さんが、なんて言ったんだよ!!」


必死な様子で問いただす彼に、

わたしの唇が、震え出した。


胸の奥から、ジワジワと熱いものが込み上げてきて、

それが、わたしの目頭まで迫ってくる。


緊張が、わたしたちにふりかかる、


そのときだった。





「宇佐美さん!!」





切羽詰まったような男の声に呼ばれ、わたしはハッと我に返った。廉も驚いたようで、わたしの顎から手を離す。


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