《MUMEI》
『バイバイ』
.

「ちょっと有名だからって調子乗ってんじゃねーよッ!!」


「『ちょっと』じゃねーだろッ!!訂正しろ、タコッ!!」


「知るか!!絶対、訂正なんかしねー!!」


「なんだとッ!!」


いつの間にか、話題がすり替わって、バカげたことを言いはじめた。

わたしは聞くに耐えられず、


「いい加減にしてッ!!」


ふたりに負けない大声で、叫んだ。

わたしの声に、

ふたりの言い争いが、ピタリとおさまる。



不意に訪れた静寂の中、

わたしは自分のバッグにカメラをしまうと、

それを肩にかけ、ベンチから立ち上がった。


ぽかんとしている仲元くんの目を見つめて、

帰ろ、と、小さく呟く。


わたしのかけ声に、仲元くんは我に返ったのか、うん…と小声で頷いた。


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