《MUMEI》

.

仲元くんに促され、わたしは廉に背を向け、彼の後ろを歩き始める。


その背中に、


「待てよ!」


苛立った廉の声が飛んできた。

わたしは足を止める。

そうして、肩越しに、ゆっくり振り返った。


焦燥がうつる廉の顔を見て、


わたしは、ゆったり、ほほ笑む。





「バイバイ、アイドルさん」





唄うように呟くと、わたしはすぐに廉から目を離し、仲元くんの腕を引っ張って、早足でまえに進む。


背後から、


「俺は納得してねーからなッ!!そんなテキトーな言葉、絶対認めない!!」


早口にわめき立てる廉の声が届いたけれど、

わたしは、振り返ることを、しなかった。





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