《MUMEI》 . 思わず、わたしが『彼』の姿に見とれていると、 『彼』は、無表情のまましゃがみ込んだわたしの顔を覗き込み、ごめんなさい、と謝ってきた。 「ケガ、してない?」 そう呟き、躊躇うことなくわたしの手を取って、ゆっくり立たせてくれた。 しなやかな逞しさを持った指先だった。 「だ、大丈夫です…」 わたしは『彼』の手に、ドギマギしながら、小さく言う。 『彼』はなにも答えることなく、今度は地面に散らばった、わたしのレポート用紙を黙々と拾い始めた。 それを見て、わたしはハッとして、すみません!!と謝り、慌ててレポート用紙を集める。 . 前へ |次へ |
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