《MUMEI》

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レポート用紙を集め終わると、『彼』はその紙の束を、黙ってわたしに差し出した。



−−−わたしに向けられた、

その、涼やかな瞳を目の当たりにして、



わたしは、

名前も知らない、この『彼』に、



たった一瞬で、





恋に落ちてしまったのだ。





******





その場にひとり、残されたわたしは、空を見上げた。

どこまでも広がる青い空。

柔らかい風が、わたしの頬をくすぐる。


ゆっくり目を閉じて、深呼吸してみる。





−−−あの、出会いひとつで、


この世界のすべてが、


とてもすばらしいものに変わった気がした。





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