《MUMEI》

「何言ってるの?」


居るじゃないちゃんと。


そう言おうと振り返ったゆかりは、
愕然と肩を落とした。


視線の先には、慌てて走り去る智香の姿が。


「本当にオカルト系だけはびびりなんだから。」


ゆかりは諦めたかのように溜め息を吐き出すと、
視線を元へ戻した。


「どうして智香には見えなかったんだろう?」


昨日と変わらない姿勢で佇む少年。


ゆかりには、はっきりと見えている。


どうして……?


疑問が降りに降り積もる。


もう我慢の限界だ。


ゆかりは必死に好奇心を押し殺し、
前へ一歩踏み出した。

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