《MUMEI》 朝の連続ドラマで出ていた時の二郎が映っている……舞台が初めての仕事でその後に初のテレビがこれだから、かなり昔のだ。 「え、まさかこれずっと録画していたの?」 うわ、引くわ……。 「全話欠かさず予約録画。」 俺に負けず劣らず熱烈なファンだ。 シールでその日のサブタイトルまで書いてあるし。 「これ、ちょーだい!」 「持ってけ、家にあっても棄てられる運命だ。もう、それしかないかもしれないけど。」 ゴミ袋の中は派手に割れている。 一瞬、マロージャーが涙目に見えた。 「貰っとく、マロージャーの愛の結晶。」 愛されてるよな……。 奥さんの気持ちが分かる。 「なあ、マロージャーってなんなんだ?」 「まあまあまあ、俺のことは七生でいいからね。」 自分でもマロージャーっていいあだ名付けたと思っています。 「音姫が他の映像は全て棄ててしまってこれだけは残しておきたくて隠していたんだが見付かってしまった。」 昔の恋人の写真とか捨てられないタイプなんだろうな。 「いい機会だと思えよ、篠さんの作り上げた木下二郎から離れて自分がこれから支えてゆく木下二郎と向き合うんだ。」 「君に諭されるとは……。」 なんかもっと良い言い方なかったのか。 それに俺、一応は教師だからね。 「二郎が素晴らしすぎるのはよ〜く分かるけども、あんなぴちぴちの可愛い妻と子が居るんだから大切にしなきゃな。信頼されてないんじゃないか?」 口下手っぽいし、不安にさせてそう。 「大切にしたいと思っている、もう二度と失敗したくはない。」 「二度と?」 「バツイチだ。」 マロージャー、そうだったのか……! 「ま、まさか愛人?」 「仕事で知り合ったんだ既に離婚していた。音姫は以前はグラビアアイドルだった。」 なるほど……ロリータアイドルか……。 「可愛かったしな……けどマネージャーがタレントに手を出すのはよろしくないぞ。」 「君には本当、説教とかされたくない。」 説教ではなく、忠告なのだが。 前へ |次へ |
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