《MUMEI》
ウェディング4
「ベルカ社は大きくしない。このままでいいんだ。時代がどんなに変わっても、いつもここにはベルカワールドがある。同じ枠の中で、最大限のパフォーマンスをし続けるんだ」

碧い瞳がきらり。

「爺さんになったら、ワンルームを買って、のんびりその集大成を眺めて過ごす」

年をとったら。
目から鱗が落ちた。

ウェルカは軍兵育ちだ。
いつ帰れなくなるかわからない、ぎりぎりのところで生きてきた。全て今この時を生きるため。
いずれこうなりたい、そのためにこれをしたい、そういう感覚がないのだ。

足元を見た。

退役した今、ウェルカの人生はどこまでも広がっている。
まるで大海原のよう。

これが、自由か。

「僕はベルカ社の長男として生まれた。しかし何も押し付けられたことはない。選んだんだ」

リアシッラを見る。
その空色を、心底美しいと思った。

「怖い?」
「いいえ」

ウェルカは答えた。
しっかりと己の膝で立てる。

「道標があるから」

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