《MUMEI》

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少し、キツかったか…。

反省しつつ、俺は、そういやさ、と話題を変えた。


「日にち、決めた?」


唐突に尋ねたら、彼女は眉をひそめた。俺が、サーフィンの話、と付け足すと、ようやく通じたようだった。

若菜は、えっと…と困惑しながら呟いた。


「…いいの?」


怖々尋ねてきた彼女に、俺はなんでもないように頷き返した。


金曜日に、あんなことがあって、腹が立ったのは事実だけれど、

サーフィンには連れていく約束とは、話が別だ。


俺は若菜を見つめ、極力キツく聞こえないように、どうする?と、柔らかく尋ねる。

若菜は少し迷いながらも、今度の日曜日なら…と小さく答えた。それを聞いて俺は、OK、と返す。


「時間はこっちで決めちゃっていい?後でメールする」


さくさく話を進めて切り上げた。若菜はなにか言いたそうだったが、それ以上はなにも言わず、また黙り込んだ。

まだ、気に病んでいるようだ。

俺はヤレヤレとため息をつき、若菜の肩をポンと軽く叩いた。瞬間、彼女の身体がビクッと動く。

ビックリ顔の若菜を見遣り、俺は笑顔を作った。


「もう、気にしないでよ。俺も、結局途中で抜けちゃったんだし、おあいこだって」


シャキッとしろ!と明るく言うと、若菜はキョトンとしていたが、

そのうち、ホッとしたようにほほ笑んだ。

彼女は、うん、と頷いて、俺の席から離れていく。

途中、いきなり立ち止まると、若菜は振り返り、俺の顔を見て、ニッコリ笑った。



「ありがとう!」



−−−それは、

みずみずしい咲きたてのバラを思わせるような、

澄んだ美しさを持った笑顔だった。





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