《MUMEI》
年下とのキス
高校の正門が見えてきた。

俺は息を整え、体を少し揺らし始めた。

そして校門をくぐるなり…。

「センパイ! おはようございます! 愛してます!」

ヨーイ…ドンッ!

「あっ、何で走って逃げるんですかー!」

捕まりたくないから。

ウチの高校、土足OKで本当に良かった。

そのまま校舎の中に入り、本当はいけないけれど廊下や階段を走る。

「ちょっ…待ってくださいよー! センパイ!」

周りの生徒は心構えていたように、避けていく。

…まあ毎朝恒例だからな。

だから俺もスピードを緩めず、校舎の中を走りまくる。

途中、声をかけられるので短く返答しながら走り続ける。

ふと後ろを振り返ると、アイツも返答している。…笑顔で。

化け物め! と心の中で思いながら、走る。

やがて屋上へ出てしまい、俺は逃げ場を失った。

「ぜぇぜぇ…」

「今日はここまでですか?」

俺はキッと後輩を睨み付けた。

「おっ前、おかしいんじゃないのか?」

「んっ? 何でですか?」

ケロっとした表情で、アイツは俺に近付いてくる。

「男の、しかも年上の俺を好きだなんて…。頭おかしいだろう?」

「―そりゃ恋に狂っていれば、誰だっておかしくなるよ」

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