《MUMEI》

出たっ! 二人きりでいる時、コイツは『後輩』から『男』の表情になる。

「センパイこそ、いい加減諦めなよ? もう学校公認なんだしさ」

「それはお前が毎朝、ああいうことをするからだろ!」

「だってセンパイを他のヤツに取られたく無いしー。牽制はしといて損は無いから」

そう言ってニヤッと笑う…。

くっ…!

コイツの二面性に騙された!

思い起こせば今年の春。

校庭の隅で、クラスメイトがコイツを取り囲んでいた。

抜群の運動神経と明るさから目立っていたコイツが、気にくわなかったらしい。

一応生徒会に入っている俺は、ある程度なら顔が利いた。

だからクラスメイトを止めたんだが…止めなきゃ良かった。

まあケンカなんてなったら、コイツが所属している剣道部は泣きをみるんだが…。

「ねぇ、センパイ。オレにしときなよ? オレ、実家金持ちだし、後悔させないって」

そう言って笑顔で抱きついてくる。

「わあ! センパイの鼓動、ドキドキしてる」

「走ったからだ!」

アレだけ走って息一つ乱さないなんて…。

しかも顔は笑顔だが、目は笑っていない…。

コイツの本気は怖過ぎる。

怖くていつも、俺はコイツの姿を捜してしまう。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫