《MUMEI》 出たっ! 二人きりでいる時、コイツは『後輩』から『男』の表情になる。 「センパイこそ、いい加減諦めなよ? もう学校公認なんだしさ」 「それはお前が毎朝、ああいうことをするからだろ!」 「だってセンパイを他のヤツに取られたく無いしー。牽制はしといて損は無いから」 そう言ってニヤッと笑う…。 くっ…! コイツの二面性に騙された! 思い起こせば今年の春。 校庭の隅で、クラスメイトがコイツを取り囲んでいた。 抜群の運動神経と明るさから目立っていたコイツが、気にくわなかったらしい。 一応生徒会に入っている俺は、ある程度なら顔が利いた。 だからクラスメイトを止めたんだが…止めなきゃ良かった。 まあケンカなんてなったら、コイツが所属している剣道部は泣きをみるんだが…。 「ねぇ、センパイ。オレにしときなよ? オレ、実家金持ちだし、後悔させないって」 そう言って笑顔で抱きついてくる。 「わあ! センパイの鼓動、ドキドキしてる」 「走ったからだ!」 アレだけ走って息一つ乱さないなんて…。 しかも顔は笑顔だが、目は笑っていない…。 コイツの本気は怖過ぎる。 怖くていつも、俺はコイツの姿を捜してしまう。 前へ |次へ |
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