《MUMEI》

―まだ同属とやり合うには、こちらの分が悪い。引かせてもらうよ―

「マノンッ!」

カルマは闇に向かって叫ぶも、そこにマノンの気配は無かった。

「…まったく。流石はマカの双子の弟ですね。厄介な存在だ」

カルマは深くため息をつくと、クイナの元へ向かった。

「クイナさん、大丈夫ですか?」

「力をいくらか吸い取られたけど、何とか…。でもカウが…!」

カウはその姿を薄くさせ、すでに犬の形も保っていられない。

「コレは少々危ないですね。クイナさん、カウを影に戻してください」

「分かった」

クイナは頷き、カウを自分の影に戻した。

「うっ…!」

しかしすぐにクイナの表情が歪み、その体が傾いた。

「クイナさん!」

慌ててクイナの体を支えたカルマは、彼女の様子に気付いた。

犬神のダメージを、その身に受けたのだ。

「…今はこうするしかないんです」

犬神はそのままでは存在していられない。

寄生する人間がいれば、何とか生きていられる。

意識を失ったクイナを抱き上げ、カルマは夜空に浮かぶ満月を睨み付けた。

「マカ、マノン…」

カルマの声は、冷たい風にさらわれた。

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