《MUMEI》
逃げる人々
 警備隊から逃げる人々は、次第に二人の方へ近づき、ついには二人を巻き込んで逃げ始めた。
「ちょっ…!マジで?」
「ユキナ、こっちだ」
ユウゴは戸惑うユキナに声をかけて走り出した。

 不思議なことに、警備隊たちは追いかけてくるものの、なぜか攻撃をしてこない。
ただ、誰ひとり逃がさないといった感じで静かに追いかけてくるだけ。

嫌な感じだ。

ユウゴはそう思いながら走っていると、すぐ隣を走っていた男とぶつかってしまった。
男はバランスを崩して、ズシャっと倒れる。
「あ、悪い」
そう言って立ち止まろうとしたユウゴを別の誰かが力いっぱい押した。

勢いでユウゴは見事に前方へ吹っ飛ぶ。

同時に後ろからボンっという小さな爆発音が聞こえた。

「いってえ…」
起き上がりながら、後ろを振り向くと、さっきユウゴがぶつかった男が、うつぶせで倒れたまま動かないでいる。
その周りには、なぜか黒い焦げ跡。

 逃げていく人たちは、その倒れた男に一瞬目をやったかと思うと、凄まじい形相をして悲鳴をあげた。
その顔にあるのは、極限までの恐怖。
「なんなんだよ」
ユウゴは、もっとよく見ようと男に近づいた。

そして、絶句した。

 男には、胴から下がついていなかったのだ。
「なん、だ…これ」
茫然と呟くユウゴの腕を、誰かが引っ張った。

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