《MUMEI》
二つの命の内…
「この男はね、私の研究材料の一人なんですよ。」
加奈子の疑問を読み取ったかの様に有馬は言った。
目線はずっと檻の中の二人を見つめたままだ。
「さっきも言いましたが、この実験はリョウ君以外、全て不適合者だった。
言わば出来損ないです…
私達は彼らの始末に困った…
自然に死んでくれれば良いのですが、彼の様にまだしぶとく生きながらえている者もいる…
役立たずが生きていたって何の意味もありません。
だからせめて役に立ってこの世を去って行って欲しい。」
有馬は怯える男をニッコリとした目で見る。
「さぁ、君が役に立つ所を見せてくれたまえ。」
「い、嫌だ!俺はまだ死にたくない!!」
男は命請いし始めた。
「頼む、助けてくれ!」
血走らせた目が加奈子をみた。
「あ、あんた!あんたが一番まともな目をしてる…」
「え…」
ドクンッと心臓が激しく脈打ち始めた。
まさかここで自分に声が掛かるとは予想外だった。
「助けてくれよ…此処から、この檻から俺を出してくれぇぇ!」
「おやおや…加奈子さん、指名されましたね。どうしますか?」
「どうするって…」
そんなの決まってる
この男の人を助け…
「言っておきますが、この男を出してしまえば、リョウ君はこのまま死んでしまいますよ?」
「そんな…っ!?」
つまりそれは…
どちらかは必ず死ぬという事。
加奈子は究極の二択を迫られた。
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