《MUMEI》 「誰?」 三度同じ言葉を発した。 案の定、女は全身で溜め息をつくと、 「今日学校で言ったよね? “梶原菜月”!!」 そう言って、頬を膨らませた。 そんなのいちいち覚えてねーし。 「あ、そう。」 俺は素っ気無い返事を返して自転車に跨(マタ)がった。 「ちょ、ちょっと。」 すると女は慌てて俺を呼び止める。 「なんだよ。」 顔も向けずに返事した。 朝といい、今といい、いい加減うざい。 イライラが積もりに積もる。 女はそんな俺を知ってか知らずか、 消え入るような声で呟いた。 「ねぇ、本当に私のこと覚えて無いの?」 前へ |次へ |
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