《MUMEI》

「誰?」


三度同じ言葉を発した。


案の定、女は全身で溜め息をつくと、


「今日学校で言ったよね?

“梶原菜月”!!」


そう言って、頬を膨らませた。


そんなのいちいち覚えてねーし。


「あ、そう。」


俺は素っ気無い返事を返して自転車に跨(マタ)がった。


「ちょ、ちょっと。」


すると女は慌てて俺を呼び止める。


「なんだよ。」


顔も向けずに返事した。


朝といい、今といい、いい加減うざい。


イライラが積もりに積もる。


女はそんな俺を知ってか知らずか、
消え入るような声で呟いた。


「ねぇ、本当に私のこと覚えて無いの?」

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫