《MUMEI》
東京
タクミは、汽車から飛び降りた。
今までの期待は、心の奥に怯えるように隠れ、一気に不安が襲ってきた。
灰色に映る街。
人の多さ。
機械仕掛けの人形のような表情。
速さ。
まるで暖かさを感じない街。
《この街で、何ができるのか?何処へいけばいいのか?》
答えなどあるはずもなく、歩いた。
タクミは、向かった。
唯一聞いた事のある街。
新宿へ。
なんとか新宿に、辿り着いたタクミは、驚いた。
あふれかえる程の、人の多さ。
まともに歩く事さえもできない。
祭りでもやってるのか?と思ったが、違った。
それが、東京、新宿のごく日常の姿だったのだ。
すべてに圧倒され、人の流れるままに、流され着いた先は、歌舞伎町。
タクミは、不思議な感覚にさいなまれた。
サラリーマン、学生、浮浪者、風俗嬢、やくざ、異国の者。
違うものすべてが、普通に交差している街。
神が悪戯に作った、小宇宙がそこにあった。
街のネオンが、まぶしかった。
人々が行き交う中、大きな小宇宙の大勢の中に一人。。。
故郷に一人で、いる時一度も感じたことのない、さみしさが襲った。
大勢の中の、ひとりぼっち。。
急に涙がでた。
さみしさ、人ゴミの疲れからか、その場にへたりこんだ。
いくら、時間がたったのだろうか?
タクミは、少し気をとりもどし、ふと考えた。
《なぜこの街には、こんなに人が集まるのか?この街には、何があるんだろうか?》
タクミは、それを確かめたかった!
そして、ここで、もしかしたら何かが、自分の居場所が見つかるかもしれない!と思った。
だからといって、行くあてのないタクミは、その街に圧倒されつづけ、その場を動けず、朝を迎えた。
空が白々と明け始めると、夜とは違う街が顔をのぞかせ始める。
すごい量のゴミ。
それに群がるカラス。
夜の残党達。
この街は、一度も眠らない。
そして、タクミの東京は、はじまった! 寝床は、コマ劇場横のサウナ。
しばらく仮眠をとり、出た。
まず、何でもいいから、仕事がほしかった。
その日から、毎日毎日、仕事を探しては、サウナへ帰る日がしばらくつづいた。何をしたいのか、何をすべきかは、わからない。
ただ何かしたかった。
不思議な街だった。
学歴もなく、知り合いもなく、なんの保障もない自分を雇ってくれるとこは、それなりにあった。
この街は、表は、華やかだか、どこかで、とても乾いてると感じた。
仕事には、有り付くが、気を張りすぎ、まだ子供なのか、些細なことですぐ、喧嘩になり、やめてしまう。そんな事が、続き、知り合いどころか、仕事さえもままならず、何かを探すどころか、どんどん自分を見失っていく。
東京のど真ん中。
大勢の人。
こんなに、人がいるのに、誰も、自分を知らない。
心の叫びは、誰にも届かない。
毎日毎日、酒に溺れた。
まるで、父のように・・・。
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