《MUMEI》 「でもっ、今はいい…。キスもさせてくれなくなったら、オレ死んじゃう…」 いっそのこと、死ねば?って言いたかったが…。 目の前に迫るアイツの真剣な表情に、何も言えなくなってた。 後頭部にかかるアイツの熱い手、そして唇。 ただ触れるだけの、幼いキスはずっと変わらない。 唇を離した後の、真っ赤なアイツの顔も…。 「…やっぱり好きだよぉ」 情けない声を出し、俺に抱きついてくる。 「別にキライとは言ってないだろう?」 「そうだけどぉ」 見えない耳と尻尾がパタパタと動いているようだ。 ああ…やっぱり、ワンコだなコイツは。 「まっ、もうしばらく待てば?」 「待ったら…恋人になれる?」 「可能性は…無いとは言えないかも、な」 「…なら待つよ」 涙目で、真っ直ぐに俺のことを見てくる。 「オレ、待つのは得意だから。だって出会ってすぐ、好きになっちゃったんだもの。キスできるまでも時間かかったし」 …そんな前から俺のことを…。 『待て』が得意なワンコだな。 「だから、ずっと待つよ。好きだって、恋人になりたいって言ってくれるまで」 「延長戦だな」 「構わないよ! ずっと一緒にいられるんなら」 …やれやれ。 俺の方は、いつまで『待て』ができることやら。 案外できなくなるのも、早いかもしれない。 前へ |
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