《MUMEI》

「それはなんでしょ〜かあ…」

「味噌!味噌味噌!あっ!動くなバカ!布団汚れたらゲンコだかんなっ!」

「〜〜〜!!」



俺の額に味噌を塗り終えた聖ちゃんはそこに丁寧に剥いたニンニクを飾り付けだした。


鼻に葱が刺さってるから臭いはよくわかんないけど、でもニンニクから漂う臭いの刺だけは何となく口の中に入り込んでくる。

「ぜってー動くなよな、よし完了!後は一寝入りして体休めなさい!」

聖ちゃんはそう言うと、味噌のパックを持ち、部屋から出て行った。











阿呆や、今の俺めっちゃ阿呆や…

今死んだら間違いなく絶対笑いモンになる…



聖ちゃんちっとも戻ってこない。
なんでだろ?


心細い、寂しい、

悲しくなってきた…

「グズン…、ひじりちゃ〜ん…」


俺は泣きながら、気がつけば眠っていた。













ヒヤリとして、俺は目が醒めた。




「……ごめん、起こしちゃった?」


「あ……」



目に映る人物。




それは聖ちゃんのお兄様、佐伯陸さんで…


「ハハハハ!あんまり臭くて窓開けちゃったよ!」


「!!!うわっ!」

慌てて起き上がったら額から味噌とニンニクが布団に落ちた。
「〜〜あ〜ッ!怒られちゃうッッッ!」

慌ててベッドから飛び抜け、俺はティッシュを掴んだ。


「アハハハハハハ!!長沢君って面白い子だったんだねえ!もう!アハハハハハハッ!」



陸さんは涙を流しながら背中をよじって笑っている。


「……ぐず…」



俺は涙目で、葱を抜いた。






もう熱は…



おかげさまで下がったみたいだ。









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