《MUMEI》

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わたしは、なに?とぶっきらぼうに尋ねる。


「どーしたの?よく聞こえない」


文句を言ったのだが、絵麻も聞こえないようで、勝手に話をつづける。


『あのね!…今…駅!駅…いる…ど!!ちょっと…聞こ…てる!?』


「聞こえなーい!もしもし?」


『もし…し!!これ…ら、帰…!電車…乗る…ら!』


意味不明な言葉を発したあと、絵麻の電話は突然切れた。

ツーツー!という、無機質な電子音を聞き、わたしはため息をつくと、受話器を戻した。

電話を終えたことに気づいたお母さんは、だれから?と尋ねてくる。

わたしはキッチンのカウンター越しに見えるお母さんの顔を見ながら、絵麻から、と答えた。


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