貴方の中の小悪魔
を知る神秘の占い《MUMEI》現実という名の悪夢 その2
「………っ」
エグザスは、息を呑む。
相手が誰かも解らない。
しかもそいつはたった一動作で自分の命を奪える。
その事実に、怯えた。
均衡した状態が五秒続く。
「……何者だ」
問い掛ける声は、日常の面影を残していた。
相手が誰かは直ぐに理解出来た。
「マル…クス、さん一一?」
「その声は一一一一一、エグザスなの、か?」
「僕です。エグザスですよ。」
「そうか……。お前、生きていたんだな。」
ゆっくりと、マルクスさんから安堵の一言が洩れた。
そうだ。
マルクスさんが生きているならば、リディアとティナはどうなのだろうか。
その疑問を、解消したい。
「マルクスさん。リディアとティナは………?」
回答は、少しの躊躇いの後に返ってきた。
「会いたいのなら、付いて来い」
言い放つと同時に闇に光が灯る。
浮かび上がったのは自分とマルクスさんの姿、そして洞窟の土壁だけ。
「……一一一マルクスさん。……その、傷は一一!」
照らし出された自分の知人は全身に傷を負っていた。
中には、額から左眼を一閃に切り裂いた斬傷等の大怪我もあった。
「……二人は、奥に居る」
静かに踵を反す。
何故だろうか。
彼の言葉は、深い憂いと憎しみに満ちていた。
何分歩いたかは判らない。
しかし長くは無かった。
奥には、少し広い空間が在った。
村人の多くは其処に居た。
その中にリディアとティナが見当たらない。
村人の中に入り、二人を探す。
案外簡単にティナの後ろ姿が見つかった。
駆け寄り、ティナに話掛けようと肩に手を置こうとした刹那。
マルクスさんの憂いの意味は明確に、この事を嘆いていたのだと。
今の自分には分かってしまった。
「……嘘だ」
信じられない。信じたくない。
信じられる筈が、無い。
涙が頬を伝う。
確かに二人は居た。
それは現実だった。
ただ、同時に。
それは姉の亡骸に泣き付く少女という姿を以て、
エグザスに悲哀というの名の大きな喪失を齎らした。
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