《MUMEI》

.

変装用と思われる、大きなダテ眼鏡の位置を直しながら、わたしのだらし無い姿をジロジロ見て、まぁいいや…とため息をつく。


「とりあえず、乗れや。みんな待ってっから」


そう言ってタクシーを指さした。いきなりの展開に、わたしはたまげる。


「どこに行くの!?」


素っ頓狂な声で叫んだわたしに、廉はしれっと、クラブ、と答えた。


「今夜、仲間内でバースデーイベントがあるんだよ。お前も『特別』に連れてってやる」


当然のように言ってのけた廉に、わたしは目眩を覚えた。


「こんな格好で、そんなトコ行けるワケないじゃん!!」


精一杯言い返したが無駄だった。

廉は舌打ちして、わたしの腕を掴むと、待たせていたタクシーに無理やり乗り込んだ。

わたしが座席に倒れ込んだのを確認して、廉は、出して、と運転手に告げる。

無情にも自動ドアが閉まり、タクシーは発進してしまう。


.

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫