《MUMEI》

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走り出した車の中で、わたしは廉につかみ掛かった。


「アンタはどーして、いつもいつも急なのよ!!『アポイント』っつー言葉知らないの!?」


喚き散らすわたしに、廉は、うるせーな!と言い返してくる。


「まえもって言ったって、お前、絶対キョヒるだろッ!!」



………確かに〜。



妙に納得してしまった。


わたしはシートに座り直しながら、ため息をつく。


「だいたい、なんで家まで押しかけて来るのよ。『関わらないで』って、言ったじゃん」


うんざりしながら言うと、廉は感じ悪く、フンと鼻を鳴らした。


「あのときの台詞は、聞かなかったことにする」



−−−『あのときの台詞』というのは、

たぶん、わたしが廉に『カッコ良かった』と言ったことだろう。


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