《MUMEI》 . しばらくしてタクシーが停車した。 ブレーキの負荷に気づき、わたしと廉はピタリと言い合いをやめる。 静かになった後部座席へ、運転手がシート越しに振り返った。 「着きましたよ、デパート」 言われて、わたしは窓から外を眺める。 目の前に、大きな有名百貨店が煌々とライトアップされてそびえ立っていた。 ………マジかい!! 呆然としている隙に廉が会計を済ませると、わたしが座っている側のドアが静かに開いた。 まだぼんやりしているわたしに、廉は隣から、オイ、と声をかけてくる。 「さっさと降りろ、邪魔!」 言いながらわたしを無理やり押し出した。 わたしと廉を降ろしたタクシーは、颯爽と夜の街の中へと走り去ってしまう。 . 前へ |次へ |
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