《MUMEI》 「ちょ……。」 俺も先輩も慌てて踵を返し、 榊原を追った。 奴の足は速かったが、 まだ先輩の方が速かった。 いけー!先輩!! 心の中で密かに声援を送る。 だが榊原は先輩が追いついて来るのに気付き、 パスを出した。 「頼むぜ、安藤!」 榊原は安藤と呼ばれた、 栗色の髪で、前髪を逆立てた奴に鋭いパスを送る。 「くそ!!」 悔しがる先輩。 榊原は振り返り、 実に楽しそうに悔恨で歪む先輩の表情をみていた。 安藤は思ったより俺から近かった。 走れば追いつける距離。 俺はやけになって走った。 安藤が丁度コートの中腹地点についた頃、 俺は安藤にスライディングした。 前へ |次へ |
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