《MUMEI》
オフ1
ミンクが連休をくれた。
イベントが順調で、リアシッラは穏やかな日々を過ごしている。暴力沙汰になるような、厳しい会合の予定もない。

「スーツを脱いで、息抜きをしてらっしゃいな」

天宮が潜伏先のアパートを自由に使ってくれて構わないと言うので、小荷物をまとめて私服で出掛けた。

習慣で、鞄と小刀は腰に提げる。この街で銃刀等をちらつかせてはならないとミンクに習ったので、隠密仕様にした。

ミンクが表玄関まで見送りにきてくれた。

「かわいい刺繍」

ウェルカの私服のことだ。
袖口にプテラノドン。

「こちらのことは心配しないで。若様は寂しがると思うけど」

「まさか」

「帰って来たらわかるわ。さ、行ってらっしゃい」

目元に皺の寄る優しい笑顔。幼い頃の母の記憶が蘇った。

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