《MUMEI》
オフ2
「いらっしゃーい」

天宮の男らしい低音。
訪ねてみると、そこはガラス張りのデザイナーズオフィス。

「ミヤズデザイン」
はめ込まれた看板を読む。

「そう。あたしの」

無機質なデスクにポップカラーのイス、壁一面のホワイトボードにはデザイン画が並んでいた。
従業員はひとりもいない。

「これが仕事?」
「やだ、本職は軍人よ。この街の治安調査をしててね。職業は選ばせてもらったの」

治安調査。
根気のいる地道な仕事だ。前線に出ていたウェルカには縁がない。

デザイン画を眺めていくと、煙草のパッケージから、バーゲンセールのポスター、ウェディングドレス、インテリアまで。

「依頼がきたものは、何でもやってるの。安価で洗練されたサービスが基本。好きなとこにかけて」

「ありがとう」

応接用であろうソファに落ち着くと、天宮ががしゃがしゃと茶を運んできた。

「甘いものは好き?」

花柄の皿にまるいクッキー。
頷くと、

「よかった。ここのおいしいのよ。何が好きかわからないから、色々取り寄せておいたの」

天宮の抱えた紙箱の中には、色とりどりのスイーツ。フルーツタルトがウェルカの目を引いた。

いれてもらったアールグレイに口をつけ、

「それで天宮」
「何?」

「わざわざ手紙まで寄越して、俺に何をしてほしいんだ?」

ふたり向き合ってにやり。

「話しが早くて助かるわ」

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