《MUMEI》

 俺では、殺戮者となった流を止められない。
 流にあんな笑顔をさせられない。
 それができるのは王士だけ。
 王士が自分の思いを、流に好きだと伝えれば、流は幸せになれるのに。
 なのに、王士はそれをしようとしない。
 なぜ流は、王士を好きになったのか。
 はがゆい。
 口に苦味が走るほどに。
 その一方で、王士で良かったとも思う。
 だからこそ、俺は望んでやまない。
 王士が、思いを流に伝えることを。
 2人が添い遂げることを。
 それが流の幸せとなるはずだ。

 そのためなら俺は、いくらでも血塗られた道を歩こう。
 いくらでも闇に染まろう。
 たとえ2人に憎まれようとも構わない。
 流さえ幸せになれるなら、それが俺の幸せなのだから。
 ……だから、しっかりしてくれよ王士。
 俺ができなかったことをやり遂げてくれよ。




 頼むぜ、流の、ただ一人の王子さま。











〜終〜

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