《MUMEI》
オフ6
ウェルカが目を覚ますと、隣に天宮の姿はなかった。代わりに、ご機嫌な鼻歌とトーストの匂い。

休日らしい休日だ。

ごろりと寝転んだまま見知らぬ天井を見上げ、するべきことのない身軽さに、ほっと息をついた。

ベッドでもたついていると、
「起きた?」

シャツにスウェット、乱雑に赤毛をひとまとめにした天宮。

「ん」
パンツ一丁で掛け布団を蹴り上げると、がばりとシャツを被せられた。

「顔を洗ってらっしゃいな」

背を押された先にはつるつるの洗面台。温水に羽のようなタオル。

さっぱりして戻ると、朝食が整っていた。
無糖のホットミルクティーが出てくる。求めていたものとあまりにも合致していたので、驚いた。

「咲みたい」
ぽつりと言った。

現役時代の相方のことだ。
恵まれた体格で、仕事ができ、、いつも爽やかな笑顔で、愛想がよく、バレンタインデーにはチョコがどっさり。

入隊したばかりで右も左もわからないウェルカの世話を、かいがいしくやいた。気付けば一緒に暮らしていた。短所といえばお説教くらい。

リアシッラのために生きると決めた時、軍本部で別れを告げた。
今頃、どうしているか。

「光栄だわ」

正面に腰を下ろした天宮が言った。

「光栄?」
「ええ」

「咲を知ってる?」
乗り出すように尋ねると、

「同期ですもの」
天宮がにこり。

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