《MUMEI》 . 相当、時間をかけて、 とても慎重に、ワンピースに着替えたわたしは、 恐る恐る試着室のドアを少しだけ開いた。 「お疲れ様ですぅ〜!!」 途端に店員の、よく透る声が響いてくる。 わたしは試着室のドアから顔だけを覗かせ、やたら笑顔の店員に向かって、曖昧に笑って見せた。 店員はわたしの元へ近づき、サイズはどうでしたか?とか、いろいろ尋ねてきたが、はっきり言ってそれどころじゃない。 首を出したままの姿勢で、キョロキョロとブティック内を見回すと、 廉が店内に飾られていたヘアアクセサリーをいじっているのが見えた。 ………あンの、脳天気オトコめッ!! 必死に念を送っていると、珍しくそれが通じたのか、彼はふと、視線をわたしに向ける。 「やっと着替えたか!!」 イラ立った様子で、ズカズカとこちらに歩み寄ってくる。 . 前へ |次へ |
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