《MUMEI》 美里警察署の道場では、大勢の警察官が、柔道着姿で練習に汗を流していた。 木谷美里。24歳。 彼女は男と一対一で柔術のスパーリングをしていた。 白い柔道着に黒帯が誇らしく輝く。短めな黒髪に負けん気丸出しの顔。しかし美しい表情をしている。 鋭い眼差しで向かい合う。お互いに素早く手を出して柔道着を掴もうとするが、両者ともそれを嫌う。 美里が先に片足タックル。粘る男に足を掛けて倒すと同時に膝十字固め。 「アタタタ…」 男がタップするとすぐに技を解き、もう一度向かい合う。 美里が腕を取る。素早くバックに回り、足を掛けてうつ伏せに倒す。美里は背後からスリーパーホールド。男はゆっくりタップした。 「美里チャン。強過ぎるよ」 美里はニコッと笑った。 練習を終えてシャワーを浴びる。鍛え抜かれた美しい体。すました顔も愛らしい。 警察署の前で、後輩の瑠璃花が待っていた。 「先輩」 「あ、瑠璃花」 「先輩。夕ご飯一緒に行きませんか?」 「これからパトロールよ」 「パトロール?」 「私服で夜の街を歩く。ここはあまり治安がいいとは言えないからね」 二人は、歩きながら話した。美里はグレーのスーツ姿。いつでも臨戦態勢だ。瑠璃花は水色のワンピース。警察官には見えない。 「毎日無給でパトロールしてるんですか?」 「課長には許しを得ているわ」 「プライベートなくなっちゃいますね」 「防犯こそ警察の本業よ。事件が起きてからでは遅いんだから」 美里と食事をしたかった瑠璃花は、やや意気消沈した。美里は瑠璃花の沈んだ表情を見ると、すました顔で言った。 「瑠璃花。パトロール付き合ってくれるなら、食事行ってもいいよ」 「ホントですか?」瑠璃花はパッと明るい笑顔に変わる。「普通逆ですよ。先に夕飯食べません?」 美里も笑顔で言った。 「わかったわ。そうしましょう」 前へ |次へ |
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