《MUMEI》

ハンドボールを知っている観客は騒然である。



ザワ…


「2枚目のイエローッ!?」


ザワ…


「つ〜かチームの警告3つじゃね〜かッ!!」


ザワ…


「この時間でヤバいだろ!!」


ザワ…



























チームで警告が3つ。


それは危機的状況と言える。


本来は2つのファールで2分の退場となるのがハンドボールのルールであるが、


警告が3つになると状況は一変する。


この先1つでも警告を貰うとその選手は即2分間退場。


つまり、


この段階で警告を受けていない選手も、


1つの警告で退場。


市立工業はベンチを含め全員が退場リーチ状態である。



























赤高ベンチ。



「これがキミの作戦か…。」



安本が呟く。



「そうですよ。」



クロは無表情で返した。



「千秋がケガしたらどうする気だったんだ?」



「…スポーツにケガは付き物ですよ。」



「ふざけるなッ!!!!」



静まり返るベンチ。


コートに立つ選手たちも異変を感じていた。



「…沖。


そろそろ行くよ。


準備して。」



クロは安本の言葉を聞き流す。



「お…おっす…」



アップを始める沖。



「聞いてるのか!?
勝つ為とはいえ選手に危ない真似させるのがキミのやり方なのか!?」



「…うるさいすね。」



興奮する安本にクロは飽き飽きした様子だ。



「選手の気持ちも考えろ!!」



安本がそう言った時だった。



「考えてますよ!!!!!」



それまで淡々と話していたクロが叫んだ。

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